今年の WordPress 貢献活動の振り返りと、来年の目標

年の瀬になりましたので、今年一年、自分が WordPress コミュニティにおいてどんな活動を行ったのかを振り返ってみる事にしました。

活動のまとめ

自分が主に関わっているチームはコアです。つまり、GitHub や Trac を通じて、オンラインで他の貢献者たちとコミュニケーションしたり、Issueやチケットを立てたり、コードを読み書きすることが中心です。ありがたいことに、LOOS、Hostinger、Kinsta の三社から支援いただいており、週25時間以上を貢献活動に費やしていました。

すべての活動を可視化することは難しいのですが、12月27日現在、2025年に Gutenberg・WordPress コアにおいて提出した Issue・チケット・プルリクエストは以下のようになりました。

これら以外に、他の貢献者が提出した Issue のテスト・トリアージやプルリクエストのレビューもほぼ毎日行っていました。

また、コア開発以外の活動についても改めて思い出してみたのですが、以下のようなものがありました。

Gutenberg への貢献

WordPress の開発に関しては、大きく分かれてコア・Gutenbergの二つがあります。自分は、その二つのうち Gutenberg での活動がほとんどだったのですが、その中で個人的に印象的だったタスクや機能をいくつか挙げてみたいと思います。

Notes

いわゆる「ブロックにコメントをつける機能」で、WordPress 6.9でリリースされました。自分は、この機能の開発に9月頃からかかわっていたのですが、やるべき事があまりにも多すぎて、正直「この機能は6.9に間に合わないのでは。。?」と心の中で感じていました。ですが、沢山の素晴らしい貢献者達と密にコミュニケーションを取り合い、膨大なタスクを一つ一つ解決し、無事WordPress 6.9でリリースできたことを嬉しく思っています。

Notes iteration for WordPress 6.9 · Issue #66377 · WordPress/gutenberg

Time to Read ブロック

このブロックの最初のコードは自分が書き、Gutenberg プロジェクト上で2023年2月にマージされました。ですが、アクセシビリティ上の懸念点が指摘され、コアに出荷されないまま二年が経過しました。

「このまま Gutenberg プラグイン上にだけ残り続けるのかな。。」と思っていましたが、8月頃から急に動きがあり、いくつかの機能強化・改善を経て、WordPress 6.9にリリースされました。おそらく、デフォルトのブロックをもっと充実させる事を提案するこの Issue の影響があったのかなと推測しています。

最初このブロックのコードを書いた時は、「単純にコンテンツを適当な数字で割って出力するだけのブロックでいいんだな」と考えていましたが、文字数をカウントすることの本当の難しさ、アクセシビリティの大切さなど、コアリリースまでの一連のタスクの中で多くのことを学ぶことが出来ました。

投稿エディターの完全 iframe 化への取り組み

詳細は後述のリンクにて確認していただきたいのですが、現在の投稿エディターは、登録されているブロックのバージョンによって iframe として動作したりしなかったりします。これに関して、将来的には一貫して iframe として動作させる事を目指しているのですが、投稿エディターが iframe だと上手く動作しないプラグインがあったりするため、どのように・いつ iframeエディターに移行するかが焦点でした。

この件に関して、多くの反響や懸念があることは理解しているので、できるだけ消費者の方たちに混乱・不安を招かないよう、2026年も引き続き慎重に進められれたらな。。と思っています。

はじめてのプラグインリリース

Gutenberg プロジェクトは、GitHub リポジトリ上で開発が進められており、WordPress のメジャーリリースにあわせて、その時点での最新バージョンの Gutenberg がコアにバンドルされる、という仕組みになっています。同時に、Gutenberg 自体はプラグインであり、二週間に一度メジャーアップデートがリリースされます。

このリリース作業は、空いている貢献者間で持ち回り?で作業されているようなのですが、今年は初めて自分もこのリリースを担当させていただくことが出来ました。

トリアージリードとしての責任

ここからは、Gutenberg への貢献活動以外で、2025年に個人的に印象的だった出来事を書いてみたいと思います。

2025年に WordPress のメジャーリリースは2回行われ、6.8、6.9がリリースされました。そして WordPress では、リリースの度にリリースチームが編成されるのですが、自分は6.9リリースにおいて Ryan Welcher 氏と一緒に Triage Lead を務めさせてもらうことが出来ました。

役割について一言でいうならば、「タスクをレビューし、優先付けし、そのリリースでのような対応を行うかを判断する」事でした。毎日提出される多くのチケットや Issue の内容を技術的に理解し、適切なタスクに振り分け、期限までに適切に対応されるようにするために貢献者達とコミュニケーションを取る。リリースのための自身の開発やレビューとは並行してこの作業行わなければならなかったため、かなり大変でしたが、迅速な判断力や、幅広い技術的な知識が少し得られたかなと思っています。

Triage Lead としてももう一つの役割は、「バグスクラブ」といって、Slackを通じて、テキストチャットかつリアルタイムでチケットのトリアージを毎週行うことでした。もちろん英語でコミュニケーションを取るのですが、バグスクラブの進行・チケットの内容理解・参加者とのコミュニケーションすべてをぶっつけ本番で行うのは無理だな。。と思ったので、あらかじめバグスクラブで使いそうなテキストの英語訳をいくつか用意してすぐチャットにペーストできるようにしておいたり、その週にトリアージする予定のチケットをあらかじめ理解しておいたりして、当日のバグスクラブでは他の参加者とのコミュニケーションに注力できるようにしました。

ただ、そもそもの問題が自分の英語力が低いことなので、英語のリーディング・ライティングをもっと流暢に・迅速にできないといけないな。。と改めて痛感しました。

初めてのコアコミット

WordPress 本体のコードは、SVN リポジトリで管理されており、そのリポジトリへのコミット権限をもつ貢献者の事を「コアコミッター」と呼びます。

自分は、2024年9月頃にコミット権限をいただいていたのですが、コアにコミットしなければならないコードがある度に「まだコアコミットや SVN には詳しくないので。。」と、他のコアコミッターの方にコードのコミットをお願いしていました。

さすがにこのままではだめだな。。と思いたち、コミットするパッチができた時点で、他のコミッターの方たちの助けを得ながら、無事最初のコミットを実行することが出来ました。自分があまり SVN に慣れていない事、またコミットメッセージのフォーマットに関して厳密なルールがあることから、今でもコミットするときは緊張します。

来年の目標

ありがたいことに、振り返ってみると今年も WordPress 漬けの一年でした。来年もそうありたいと願ってはいますが、こういうことができたらいいな。。ということをいくつか書いてみたいと思います。

WordPress 7.0 に向けた貢献

2026年には3回のメジャーリリースが予定されていて、その最初のリリースである7.0に関してのロードマップが発表されています。ロードマップに掲載されているタスクすべてが7.0で実現するとは限りませんが、自分が関与しているタスク含め、できるだけ多くのタスクが7.0にリリースできるよう、来年1~2月は7.0に向けた作業に注力したいと思います。

他のプロジェクトへの関与

Gutenberg に開発で貢献することは本当に楽しいです。楽しいのですが、同時に Gutenberg 以外のプロジェクトにも参加して、WordPress に関する技術的知見をもっと広げないといけないなと感じています。

今興味があるプロジェクトは、やはり AI に関する事です。いくつかのプロジェクトが並行して・関連しながら進行していますが、確保できる貢献時間の何割かを使って、少しづつ貢献していけたらなと思っています。

WordPress 以外の OSS への関与

WordPress ばかりに貢献していると、どうしても WordPress で使われているプログラミング言語や技術に知識・経験が偏ってしまいます。自分もそれを自覚していまして、エンジニアとしてもっと幅広く経験しないといけないなと常々感じています。

2026年は、出来るだけ WordPress とはかけ離れたプロジェクト、できればオープンソースソフトウェアに、何らかの形でかかわり始められたらいいなと思っています。その経験が、回りまわって WordPress に貢献する上でも役に立つと信じています。

最後に

沢山の方のおかげで、今年も一年無事に過ごす事が出来ました。関わったり助けてくれたすべての方に、改めて感謝したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です